数学オリンピック1次予選問題解いてみました ( その1 )

はじめに

なんか気づいてみたら、今年度 ( 2016年1月 ) のJMO ( 日本数学オリンピック ) の1次予選問題を解いてましたので、まあ説明でも、というわけで。( 答えだけなら問題の下に載っています )

全部で12問ですが、まだ ( 1/27現在 ) 2問解けてません…( ぐぬぬ )。1/28に問11が解けました。残り1問!! なお、図を描いたりするのが面倒なので数式でなんとかなるところから行きたいと思います。つまり、順番通りではありません。

目次

解説

あ、問題文は適宜端折ってポイントを押さえて改変してますので、オリジナルについては冒頭のリンクからご覧ください。

問1

問題

  • $\sqrt{\frac{11^4+100^4+111^4}{2}}$を計算せよ

解き方

答えは11221ですね。電卓使えばすぐです。えっと、もちろんnaiveに計算しても答えは出ますが、如何に工夫して速く答えを導くか、が試されているわけです。( 実際の予選では、均等に時間を割り振ると1問15分であることに注意 )

なので、数字でなく一旦文字式とみなして考えます。つまり根号の中身$\frac{11^4+100^4+111^4}{2}$を$\frac{a^4+b^4+(a+b)^4}{2}$と置き換えてみるわけですね。そうすると、

$$ \begin{eqnarray} \frac{a^4+b^4+(a+b)^4}{2}&=&\frac{a^4+b^4+(a^4+4a^3b+6a^2b^2+4ab^3+b^4)}{2} \\ &=&a^4+2a^3b+3a^2b^2+2ab^3+b^4 \\ &=&(a^2+ab+b^2)^2 \end{eqnarray} $$

因数分解できるので、$\sqrt{\frac{a^4+b^4+(a+b)^4}{2}}=a^2+ab+b^2$すなわち、$\sqrt{\frac{11^4+100^4+111^4}{2}}=11^2+11\times 100+100^2$と計算できるわけです。

…え? そんな因数分解思いつかねーよ?? まあ、いきなりやれというのは辛いと思います。

では、次のような問題は見たことはないでしょうか?

これは、$x^2$の項を挟んで、係数が対称になっているのがミソです。そのため、

$$ \begin{eqnarray} f(x)&=&x^4+2x^3+3x^2+2x+1 \\ &=&x^2\biggl( x^2+2x+3+\frac{2}{x}+\frac{1}{x^2} \biggr) \\ &=&x^2\biggl( (x^2+\frac{1}{x^2})+2(x+\frac{1}{x})+3 \biggr) \\ &=&x^2\biggl( \Bigl( (x+\frac{1}{x})^2-2 \Bigr) + 2(x+\frac{1}{x})+3 \biggr) \\ &=&x^2\biggl( (x+\frac{1}{x})^2+2(x+\frac{1}{x})+1 \biggr) \\ &=&x^2\biggl( (x+\frac{1}{x})+1 \biggr)^2 \\ &=&(x^2+x+1)^2 \end{eqnarray} $$

のように、$x+\frac{1}{x}$をかたまりとして扱うことで、因数分解が容易な形に導くことができます。元の形と計算としては同じなんですね。
いやまあ、どうせ平方完成できる式になるんだろうから、決め打ちして適当に当てはめれば良いだろという話もなくはないですが。

問2

問題

  • 1~2016の整数で、「20で割った時の余り」が「16で割った時の余り」より小さくなるものは幾つあるか、個数を答えよ

解き方

答えは600個です。

まずは、$gcd(20,16)=80$ ( 20と16の最大公約数が80 ) なので、「余りがどうなるか」は80周期で繰り返すというところから。
なので、1~80での状況を地道に調べれば結構それで終わってしまいます。 $$ \begin{eqnarray} 1\div 20&=&0\cdots 1,\,\,1\div 16&=&0\cdots 1 \\ 2\div 20&=&0\cdots 2,\,\,2\div 16&=&0\cdots 2 \\ 3\div 20&=&0\cdots 3,\,\,1\div 16&=&0\cdots 3 \end{eqnarray} $$ …最初は余りが同じなので、個数を数える必要はありませんね。 $$ \begin{eqnarray} 15\div 20&=&0\cdots 15&,&\,\,15\div 16&=&0\cdots 15 \\ 16\div 20&=&0\cdots 16&,&\,\,16\div 16&=&1\cdots 0 \\ 17\div 20&=&0\cdots 17&,&\,\,17\div 16&=&1\cdots 1 \\ 18\div 20&=&0\cdots 18&,&\,\,18\div 16&=&1\cdots 2 \\ 19\div 20&=&0\cdots 19&,&\,\,19\div 16&=&1\cdots 3 \\ 20\div 20&=&1\cdots 0&,&\,\,20\div 16&=&1\cdots 4 \\ 21\div 20&=&1\cdots 1&,&\,\,21\div 16&=&1\cdots 5 \end{eqnarray} $$ 16からは、「16で割った時の余り」が0に戻りますので、余計ダメダメです。…が、20になると今度は「20で割った時の余り」が0に戻って大小関係が逆転します。
まあ、この先続けてもアレなので書いてしまうと、「20で割り切れる」数から「16で割り切れる1歩手前」の数までは、「20で割った時の余り」の方が小さい、ということですね。以下の数が挙げられます。
※「16と20両方で割り切れる」場合は…? 周期80の中では、最後の80だけなので ( gcdを選んだ効果 )、気にする必要はありません。

  • 20~31 ( 12個 )
  • 40~47 ( 8個 )
  • 60~63 ( 4個 )

結局、1周期で24個、1~2000で25周期分なので、$24\times 25=600$で答えが出る、ということになります。あ、2001~2016は80で割った余りが1~16なので、個数には影響がありません。

問4

問題

次のような問題です。

  • 11×11のマス目を、マス目にそって5個の長方形に分ける
  • 分けたうちの1個は、元の外周に接していないこと
  • 分け方が何通りあるか数える ( ひっくり返したり回転して同じになる分け方も区別する )

この問題も、幾何の問題ですらそうなのですが、イメージ図は一切なく文章だけで状況を説明するという印象がありますね。

解き方

答えは32400通りです。

まずは、「分ける」ってどんな感じか、例として図を描いてみます。中央の赤い長方形が、元の外周から離れているものですね。

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まあ、そもそも中央の長方形の配置が異なれば、分け方自体も違ってくることになるのは良いでしょうか。

ここで囲碁の経験があると、中央の長方形から4か所の「辺」( 囲碁用語 ) をにらむような配置だな…と思える ( 多分 ) のですが。

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実は、これら「辺」がつながって長方形になることはないので ( 曲がった形状になってN.G. )、「辺」それぞれが中央以外の4つの長方形と1対1に紐づけられます。

ただ、これだけだとまだ不確定要素があります。それは「隅」の部分です。

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「辺」がそれぞれの長方形になるので、「隅」はそれを挟む2か所の「辺」どちらかにつなげるしかありません。2択です。そのため、中央の長方形の決め方に対して、「隅」4か所の決め方は$2^4$通りとなります。

最後に中央の長方形の決め方です。

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これはマス目を区切る10本の線の内どの2本を選ぶか、なので縦・横それぞれ${}_{10}C_{2}$通り。

結局、答えは$({}_{10}C_2)^2\times 2^4$通りと計算できます。

続く

初回号は簡単な問題で尺が足りないので豪華3本立て¥490ですよ!!的な。まあ余力のある内にぼちぼち続きを書いていきたいと思います。